俺たちSpartanic Rockersの
波乱万丈な Story vol.4
「ブロンクスは危険な香り・・・」
さて、一通り挨拶が終わった後、最初はお互いたいした話をする訳ではなく、と
いうよりもする間もないままに20人近くもいたヨーロッパのB-boy達と一緒にタクシーに分乗してフルークルの練習していたファレタスタジオへおもむいた。
案の定スタジオには世界各国から終結した50人以上のB-boy達が、練習というよりはフリーサークルでバトルを展開していた。地元からはフルサークルのメンバーを始め、New School とのミックスで独自のスタイルを展開するStep Fenz(ステフィンズ)、そしてL.A. RSC のEazyRocやカナダのBag Of Trixなど、様々なチームが入り乱れかなり熱い感じだった。(サークルといった意味ではこの日が一番盛り上がったのかもしれない)
翌日からの3日間は毎日ロックステディークルーのアニバーサリーパーティーが各所で開催された。ブロンクスのフットボールフィールドやクラブ、マンハッタンセンターというホールなどで多くのB-boy達が集い、踊り、楽しんでいた。イベントの中で最も印象に残っていたのは、なんと言ってもヒップホップ発祥の地、ブロンクスで行われたパーティーだ。内容と言うよりもその場所のデインジャラス度にはかなり引くものがあった。
近年非常に治安が良くなってきているN.Y.ではあるが、もともとはマンハッタンも含め、かなり治安が悪かった地域である。その中でもブロンクスといえば、いわゆるゲットーと呼ばれ、黒人やヒスパニックを中心とした人種の中でも貧しい人達が多く住んでいる地域で、非常に危険な場所だ。俺も何度もN.Y.へは行ったことがあるが、当然この地域に足を踏み入れたことは一度もない。そんな場所への初めての訪問である。
いよいよブロンクスのパーティーへ向かう時が来た。現場までは地下鉄で向かう。N.Y.の地下鉄は比較的安全になってきているので、まぁ普通に乗る分には特に問題は無い。しかしながらホームや通路、電車の中にいたるまで、制服の警官がウロウロしているのを良く見かける。地下鉄の治安の回復は彼らの存在のお陰と考えれば、日本に比べて危険度が高いということが容易に想像できる。また地下鉄は、路線によって乗っている人の層は異なってくる。ブロンクス方面の地下鉄には、自然と白人の姿は消え、ヒスパニックと黒人が多くなってくる。そこにいる彼らが皆危険人物という訳ではないのだが、そういう環境にいるだけで警戒心は自然と強くなってきてしまうものだ。
さて、地下鉄を降りたら、そこは既にすっかり暗くなった夜のブロンクスである。降り立った途端にその空気からピリピリとした緊張感が伝わってくる。簡単に言えば「ただならぬ危険な香り」がするのだ。これは、言葉では表現できないが、人間の第六感が感じるものだろう。駅前に立っている数人の警官も物々しい。その場所は人通りもあまりなく、ただ暗く、陰気な感じだ。俺もケイもその場の言い知れない空気を感じとって緊張した面持ちで会場に向かった。
会場に着いたらそこには人の列!レミーやクレイジー達もそのうち登場して、同じように列に加わった。しかしながらいつまでたっても中には入れない。入場規制をしているようだ。だが、会場から出てきた人間に聞けば中はそれほど混雑してはいないという。そのうち回りにいる奴らから妙な噂を聞く。
「入口のセキュリティに金を渡せば入れてくれるぜ」。
もう1時間近く待たされていた俺は、我慢しきれずセキュリティに早速交渉に行った。彼は1も2もなくO.K.を出す。イベントのオーガナイザーには申し訳ないが、こうでもしないといっこうに中に入れてくれる気配も無い。はるばる日本から来ているので背に腹は変えられず、レミー達を連れてようやく会場に入ることができた。(見上げるような黒人のセキュリティは会場に入るとそのまま俺達をトイレの個室に連れていき、そこでお金を受け取った。)日本では考えられないようなこんな不正行為も、なにかアメリカらしいと感じるのは俺だけだろうか?
やっと会場に入り、RSCのリーダー、クレイジーレッグスと話すと、「危険だから会場に入ったらもう絶対に外に出ないように!」と注意を受けた。やはり、かなり治安の悪い地域なのだろう。
会場内ではまたサークルが各所にでき、皆バトル、バトル。その他ソロバトルコンテストも行われておりなかなかの盛り上がりを見せていた。
イベント自体は深夜1時か2時ぐらいで終了した。デインジャラスなこの場所だけに、帰りの事も多少心配だったが、帰りはヨーロッパからのB-BOY達20人ぐらいと一緒に帰ったので怖いことは少しもなかった。地下鉄の1車両は俺達で貸し切り状態であり、奴らは俺には理解できない言葉で、全員で歌を合唱しはじめた。
N.Y.の地下鉄の中で、ヨーロッパ各国から来た屈強なB-BOY達が、大きな声で合唱している様子を想像してもらいたい。なんとも不思議な風景であった。
俺達はレミー達と途中の駅で別れると、ケイと2人で別の線に乗り継ぎ、帰路についた。
ちなみにこの時俺達は電車を乗り過ごし、見知らぬ駅でケイと二人、真夜中に30分以上電車を待つ羽目になる
End of The Spartanic Rockers Story Vol.4
To be continued
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