ダンスは何のために踊るのか?

全国様々な場所でコンテストの審査員を多数やらせていただいております。
そんな中、根本的な履き違えに出会う事が多々あります。

以下はとあるコンテストでの参加者の方との会話がきっかけで書いた記事を再編集したものです。
何年たっても変わらぬ、
自分の中の真実として、この記事をアップしておきます。

ダンスは何のために踊るのか?

このシンプルかつ根本的なお題を今一度考えていただき、
読んでいただいたあなたや、
保護者の方の場合はお子さんのダンスライフが、
より充実したものになっていくお役に立てれば幸いです。

とあるダンスコンテストでのお話です。
終了後ジャッジをしていた自分の所に参加者のあるグループの女性(大人の方)が質問しに来ました。


「私は今日やっていたようなダンススタイルが本来踊りたいスタイルなんですが、このダンスではコンテストに勝てないようなんです。」
・・・というような内容の事を言ってきました。

自分は、ここでちょっと語気を強めて言ってしまいました。

あなたは何のためにダンスをしているんですか?
コンテストに勝つためにダンスをしているの??

・・・と

ダンスは、本来コンテストに勝つために踊るものではありません。
そんなダンスならもうやめてしまったほうがいい。

ダンスは自分が踊りたいから踊っているのです。

それは、太古の昔から人間のDNAに刻み込まれた1つの信号です。
万人が、
どんな人でも体の奥底に、
「踊りたい」という欲求があるのだと思います。

音楽が鳴ると
「思わずリズムをとってしまう」
「気持ちが高揚する」
などは人間の習性だと思われます。

そして、単純にリズムをとるだけでなく、
「振付」や「一定のジャンルとして成立しているダンス」は
自己表現の方法の一つです。
歌を歌うのも、
絵を描くのも、
詩を書くのも皆同じです。
自分を表現すると言う人間だけが持つアートフォームの1つなのです。
自分の「想い」や「気持ち」を表現するという事は、
例えそれが人に評価されなくても、
それが自分の思った通りの表現になっているのであればそれでいいのです。

もし、それが自分の思っている表現に足りないのであれば、
それは自分自身が反省し、
何が足りないのか、
どうしたらもっと自分の思っているような表現になるのかを考え、
改良し、練習し、
そして再び踊るべきなのです。
それがコンテストで評価されようがされまいが、
そんな事は本来どうでもいいんです。

プロであるならば自己満足だけではいけないけれど、
もしプロでないならば、
まずは自分が本当に納得できるダンスをすることが一番大切だと思います。

辛辣(しんらつ)な言い方になりますが、この時自分に質問してきた方は

自分達がコンテストで結果が出せない理由を
自分達の踊りの未熟さのせいではなく
一般的にうけないダンススタイルのせいだと
自分の中で原因をすりかえていたのです

実際、この時話しをさせていただいた方は、
ダンススキルもまだまだだったし、
体の使い方も、音の捉え方も
自分から言わせていただければ、高いレベルとは言えませんでした。
その状態で自分の思った通りの自己表現が出来るとは思えません。
当然コンテストでも勝てないと思います。

ダンスは体を使って行う表現=アート です。
体を使うから、
スポーツだと思っている人もいるようですが、
ダンスはスポーツではありません。

ですが体を使っているだけに、
体をどれだけ使いこなせるかによって、表現力は大きく変わってきます。
その意味ではスポーツにおける体の作り方に一致するところが大変多いです。

表現力を大きく変えていくものとは、簡単に言うと「基礎力」です。

ダンスの基礎力とは、
リズム感であったり、
柔軟性であったり、
体を思うように操るアイソレーション能力だったり、
様々な要素がからみあったものです。

「言葉」に例えると、
ボキャブラリー(語彙)であったり、
言葉の言い回しであったりします。
語彙が少なければ、言い回しを知らなければ、伝えられない事は沢山あります。

料理で言えば、
具材や調味料が基礎力で、
調理方法が表現力でしょうか?

具材を揃えて、必要な調味料があっても、
調理方法が分からなければ料理は作れないし、
逆に料理の方法が分かっていても、
具材や調味料が無ければ料理は作れません。

ダンスは基礎をしっかりと身に付けた上で、
それを活かして表現するから、
人の心を動かすようなダンスが踊れるのであって、
誰かが踊っていてかっこいいから、
その振付だけを真似してもカッコよく踊れるわけではないのです。

「振付」とは「順番」の事です。
「踊り」の事を指しているのではありません。

ここに多くの誤解があると思います。

例えば、「ランニングマン」というシンプルなステップでも
「上手い人」と「上手くない人」がいる訳です。
「ランニングマン」の基本的なやり方が分かっていて、
それが出来ていたとしても、
「上手」と「下手」があるのはなんででしょうか?
それはリズム感とか体の使い方とか、
「ダンスの基礎力」があるか、無いかの差です。

振付の善し悪しは当然ありますが、そうだとしても、
同じ振付を一流のダンサーが踊るのと、
初心者が踊るのでは雲泥の差が出ます。
振付は確かに大事な要素ではありますが、
その事を考えても分かるように、
ダンスの善し悪しは、
振付よりも踊っているダンサーのダンス力(=基礎力+表現力)に依るところが大きいのです。

基礎的な体作りが出来ていなければ、
ダンスを思ったように踊る事は出来ないので、結果、
自分が本来表現したいダンスをする事は出来ないのです。

「想い」を伝えられないのです。

良いダンスを踊るには、
まずは自分のダンスを真摯に振りかえり、
どうしたらより良いダンスが踊れるのか考えるべきだと思います。

素晴らしいダンサーをもっと見て、刺激を受けるべきだと思います。
自分の小さな箱から飛び出して、外の世界に出る事です。

凄い、感動するダンスは世の中に結構あります!
YOUTUBEで何でも見られる現代ですが、基本は「生」で見るべきです。
「生」で見て得られるものは「映像」から得られるものと全く違います。
そういうダンスから刺激を受ける事で、
自分自身を変えていく事が出来るのだと思います。

そしてもし本当に、
自分が納得できるこれ以上無いダンスが踊れたなら、
自ずと結果が付いてくるだろうし、
もし仮に結果が付いてこなかったとしても自分的に十分納得できると思います。

自分も実際にその経験があります。
間違いないです。
大丈夫です。

自分の心からの納得が一番大切なんです。

その代わり、それにはそれなりの努力が必要です。
自分自身をごまかしなく、納得できるだけ頑張れるかどうかです。
頑張った人には必ずご褒美が与えられます。
それは「達成感」という満足です。

コンテストに出る時に、
そこで勝利を得るためにいろいろ工夫するという事は否定しません。
誰だって出るからには結果が欲しいと思います。
大切なのは、

やりたいことをやっていて、そこにちょっとコンテストを意識した変化を入れているのか、

最初からコンテストの事だけを考えて踊りを作ったり踊ったりしているのか

という違いです。

最初からコンテストの事を考えて練習したり、
作ったりしている踊りなんて、
正直言ってほとんど価値の無いものだと思います。
賞をとるよりも、
自分の心の中にある音楽やダンスと向き合うって事が大切なんです。

何故なら
ダンスは誰の為でもなく
自分の為に踊るものだからです

自分の心の声を
言葉では表せない感情を
熱い思いを
哀しい気持ちを
いてもたってもいられない高揚感を
ダンスで表現しているのです

「表現」というとまるでコンテンポラリーの世界の様ですが、
「この曲聞くとなんかめっちゃ楽しいよね!」
とか
「このビートかっこいいよね!」
とか、そんなレベルで大丈夫です。

「体が勝手に動いちゃうぜ!」で十分です。

それは音楽とあなたのダンスが呼応した結果生まれる感情です。

人の前で踊るという事は、この
「勝手にのってしまっている自分の状態」
を皆にシェアするという事です。
「心から乗って踊っているダンス」は
きっと見ている人の事も魅了すると思います。

見ている人を感動させるダンスが踊れれば、
それは自分の為だけではなく「人の為」にもなります。

人間は寂しがりやの生き物です。
いつも共感できる仲間を探しているのです。
我々、ダンスに携わるもので言えば、
同じダンスに共感してくれる仲間を探しているのです。

あなたのダンスが素晴らしければ、
そのダンスに共感する新しい仲間が出来るのです。

共感できる仲間が多ければ多いだけ、
人生はきっと楽しく、
そして充実したものになっていくのではないでしょうか。

さぁ、
新しい仲間と出会うために、
また我々のダンスに磨きをかけましょう!!
キラキラに輝いたダンスは、
きっと人生をより輝かせてくれると思います!

END OF THIS STORY