Nextream21 Kids&Jr. ダンスコンテスト2026 総評

品川の六行会ホール主催のダンスコンテスト
Nextream21 Kids&Jr Dance contest
審査員をさせていただいました。

イベント最後のコメントでも申し上げましたが、これだけ多ジャンルに渡るコンテストは珍しいと思います。
自分が専門としているストリートダンスから、ジャズ、コンテ、バレエにいたるまで様々なジャンルの子供たちが挑戦しております。
更に言うと、ソロから今回の最多人数は15名のグループまでが参加して競い合うという、視覚的な構成に大きな幅があります。
また、前提としてこのコンテストでは、照明を発注できます。
出演者が照明を依頼して、テクニカルな打ち合わせとリハーサルを経てのコンテスト。
これは恐らく日本唯一なのではないかと思います。
「地域の文化事業・教育助成を推進する」という目的で運営されている主催の六行会(りっこうかい)さんならではの特別なイベントです。
素晴らしいです。

このような大前提をおいての総評です。

まず、通常のダンスコンテストであれば照明は全員一律なため、照明効果を加味した演出は無効となります。逆にこのNextream21では、照明効果によって「作品」としての見え方が際立ちます。

自分の場合、通常は基本ダンスにフォーカスした審査を心得ております。
これは、衣装や、フォーメーションや、テーマの面白さなどよりも、個々の「ダンス」に重きを置いて審査しているという意味です。
しかし、Nextream21 では照明を事前に打ち合わせして付けているため、こちらでの印象も審査対象にしないといけません。そうなると照明と相まって衣装の効果も比重が高まります。
出演者と演出効果が一体となって評価の土俵に乗ってきているという事になります。

また、人数が多いチームは、様々なフォーメーションや見せ方が可能となるため、エンターテイメント性も高まり、少人数での出演者より当然有利になります。
これは仕方がない事です。
ソロや少人数で参戦している多くの出演者には、大きなリスペクトを送りたいです。
特にソロ出演の方々、1人で、あの大きな舞台を使って踊り切る皆さんの胆力は素晴らしいと思います。

さて、評価の基準についていくつか述べてきましたが、自分がいつも一番審査上フォーカスしているポイントは音楽性です。
音楽性? 全員音楽に合わせて踊ってるじゃん!
・・・と思われる方もいるかと思いますが、実際はそうではありません。
細かい技術的な解説は文章では相当難しいので割愛しますが、音のどの部分をどう捉えて表現するかという事がとても大切なのです。
この評価項目は、ダンスの世界ではミュージカリティという言葉で表します。
究極の状態は、ダンサーが踊ることで音が鳴っているように感じられる状態だと思います。今回は、そこまでのレベルの方は正直いらっしゃいませんでした。
そして自分自身もそのような状態になることは本当に稀です。(これは自分の踊り手としての実力不足です)
しかしながらダンスを踊る皆さんにはこの究極の状態を常に目指していただきたいと思います。私はそれを、「音楽とダンスが一体化する」と表現しています。

手の振り1つ、ステップ1つが、音楽と一体化しているダンスは、得も言われぬ素晴らしい表現となり、見ているものを魅了します。
(そして踊り手自身も非常に高い幸福感に包まれます)

ダンスは総合的な表現活動です。
以下のような要素が表現能力に関わっています
体のパーツをバラバラに動かす、アイソレーション能力。
ターンやジャンプなどに代表される技術性。
体幹に代表されるバランス性。
柔軟性。
そしてミュージカリティ。

これらをダンスを踊るうえでの基礎能力と定義します。
基礎力はどれも大事なものなので、1つだけやっておけばいいと言うものではありません。子供達はこれらの多くの事象を総合的に少しづつ学んでいます。
項目が非常に多岐にわたってるので、各スタジオや指導者がどこに力を入れているのかで、得意分野に偏りが生じてくるのものです。

例えば自分の場合は、ミュージカリティに重点を置いているので、体のバランス力や技術性は2の次の指導になってしまいます。
そしてこの「ミュージカリティ」は理解して体現するまでにはかなり時間がかかるため、筋トレや柔軟のように比較的効果を認識しやすいものと比べると、習得に相応の時間を要します。
それなので、なかなか上手くならないです。

基礎力という視点で今回の参加者の皆さんを見ると、体幹や柔軟性などフィジカルな面が強い方が多い印象でした。(これはジャンルに依存するところもあるかと思います。)
一方自分が一番大切にしているミュージカリティに重点を置いている方は少ないのではないかと感じました。

ミュージカリティ というと、ざっくり大きく分けて2つになります。
1つは打楽器に代表される「トラック(ビート)」。
もう1つが「メロディ」です。

特に、ビートが強めの楽曲を選んで参加された方は、このビートの意図するところをもっと考えて、捉えていかないといけないなと思います。
簡単に言うと、強いビートもそうでないところも、皆さん同じ強さで踊っていました。

また、ビートがない楽曲を選択されていた方も沢山いらっしゃいました。
その場合は主にメロディに合わせて踊ることになるのだともいますが、メロディーの区切りや、音の強いところなどに合わせるという事が大切になるかなと思います。
ミュージカリティという視点で見たときに、個人的には
KIDS部門の 宮下りつ さん
JR部門の 江口歌音 さん
などは、他と比較して踊りと音楽とのシンクロ性が高いと感じました。

照明や衣装の効果がとても高いと感じたのは
JR部門の MikoA さん

構成の面白さが高かったのは
Jr部門の Nexus5 さん

MIYABI さん
これは当然参加人数に依存する部分もありますが、人数が多ければ構成がおもしろいという訳ではないので、指導者の創意工夫と創造の結果だと思います。

ストリートダンスのグループの名前を上げてこなかったのは、自分の専門分野であるためそれだけ厳しい視点で見てしまう所があるのだと思います。
ですが、相対的に見て評価が低いわけではありません。
実際相対評価ではKIDS部門の私の1位はkoa☆nasi さん、
JR部門では Nexus5 さんでした。
ストリートダンスの方、あるいはビートを伴う楽曲で踊るJAZZの方には、楽曲の特性を活かしてビートをもっと捉えて踊るという事にもっと重点を置いていただきたいなと希望する所であります。

自分も含め、ダンス指導に当たる人は、多岐にわたる基礎項目の中で、何に重点を置いて指導するか悩むところがあると思います。指導者にも当然得手不得手があるからです。
そんな中、指導者だけでなく、保護者の皆様にもお伝えしておきたいのは、「短期的に成果を得られそうなことばかりにフォーカスするのはやめましょう」という事です。
ダンスの深みや素晴らしさ、楽しさを追及することと、賞をとるために踊ることとは全く別次元の事です。
小学生の時にコンテストで優勝した思い出よりも、一生、死ぬまでダンスが楽しいなと思える心の方が遥かに価値があります。
賞をとるために努力することで、向上するという事は意味があると思いますが、それだけになってしまっては何の意味もありません。
どうか、手段と目的を取り違える事の無いように、指導やバックアップをお願いしたいです。

いつも素晴らしい機会を与えてくださる「六行会」の皆さま、スタッフ並びに関係者の皆様、ありがとうございました。

P.S.
自分が何年も前に書いたものですが、よろしければご参照ください

ダンスは何のために踊るのか?
https://s-faith.com/miyatatakeo/dance-theory/why-you-dance/