俺たちSpartanic Rockersの
波乱万丈な Story vol.022
まさかの超人登場!!!
UK B-BOY CHAMPIONSHIPS への参加のため、
始めてイギリスに上陸した我々スパルタニックロッカーズ。
ロンドン到着後、
車で滞在先まで案内されるとそこには世界各国からのB-Boy達が集まっていた。
ホテルのロビーには各国から来たチームの面々が集まってくる。
しかし、ドイツやオランダ、
その他ヨーロッパ各国のB-Boy達は全く面識ございません。
その中で知っている顔と言えば唯一、
アメリカのスタイルエレメンツの面々だけ。
そんなスタイルエレメンツのメンバーとロビーで初対面した時も、
嬉しい気持ちと、やってやるという気持ちと、
複雑な思いが交錯しておりました。
前にもNYでヨーロッパのB-Boyや、
Spartanicのスイスメンバー達と初対面した時に書いたが、今回も同じ事である。
チーム同士が出会った場合、たいていいつも行われる挨拶の方法。
両チームとも横一列になって、
はじから挨拶をし、握手をし、自己紹介をしながら列がスライドしていきます。
この時もエレメンツとスパルタニックは一列になり、
挨拶を交わしながらスライドしていきました。
先頭は俺、残りのメンバーが後に続きます。
内心「おー、リマインドだ!」とか、「ダニーだ!」とか、
ちょっとしたスターにあった気分。
バトルに勝ってやろうと思ってるくせに、
全然対等な気持ちでなく、正直憧れも沢山ありました(笑)
しかし、驚愕の時は列の最後に訪れます。
握手しながらどんどん進んでいくと、
列の最後に小柄でがっしりした男がおりました。
握手を交わし、繰り返してきた言葉を言います。
「ハイ、俺はスパルタニックのタケオ。日本から来たんだ。よろしく!」
そして、その男の名前を聴いたとき、俺は耳を疑った。
「ハイ、俺はビーボーイ アイヴァン!よろしく!」
B-Boyをあまり知らない人、
あるいはアイヴァンを知らない人の為に説明しておこう。
B-Boy IVAN
この男、恐らく今世紀最強のB-Boyであると言っていいだろう。
驚くべき身体能力とダンスセンスで、
世界中のB-Boyを震撼させてきた人物である。
その跳躍力、スピードは他のあらゆるスポーツ選手をも凌駕すると思われるほど。
路上のパフォーマンスでは、
7,8人の大人を地面にかがませて、助走をつけて前方宙返りで飛び越える。
連続で見せるバック転のスピードは、口があいてしまうほど。
IVANを初めて見た時の事を俺は鮮明に覚えている。
新宿のとあるクラブで、彼はRAPを交えたパフォーマンスをしていた。
マイクを持ってラップをしていたかと思えば、突然マイクを置いて踊りだす。
彼は、俺のすぐ横にあった柱を蹴ってバック宙したのだが、
そのあまりのスピードに一瞬何が起きたかわからず、
気づいた時に彼は空中にいた。
俺はあまりのことに思わず
「あぁーーーー!」と叫んでしまったのをよく覚えている。
今まで凄いB-Boyは何度も見てきた。
「凄いな!」「上手いな!」と思ったことは何回もある。
だが、ダンスを始めてから現在に至るまで、
思わず声を上げてしまった程のB-Boyはただ一人、このIVANだけであった。
しかし俺たちにとっては残念ながら、
IVANが凄いのはアクロバットだけではない。
今や当たり前となったパワームーヴのテクニック、
エアートラックスのヴームを巻き起こしたのもアイヴァンである。
当時、俺を含めた世の中のほとんどのB-Boyは
エアートラックスを始めて目の当たりにした時に、
一瞬なにが起こったのか理解できなかった。
もちろん、エアートラックスだけでなく、
あらゆるパワームーヴのテクニックをマスターしている。
さらに手に負えない事に、この男は、
トップロックやフットワークというB-Boyのダンス部分までカッコいい!!
全身から染み出る、イヤあふれ出るフレイヴァーはハンパない。
パワー、スピード、スタイル、フレイヴァー、
何をとっても死角がない、
俺たちにとっては憧れ中の憧れであり、
目標にする事も出来ないほど、異次元のB-Boyであった。
そのアイヴァンが、
スタイルエレメンツのメンバーとして列の最後に並んでいるのだ!
彼は本来はチームのメンバーではないだけに、
完全にノーマークだったのである。
俺は、かろうじてアイヴァンと握手を交わしたものの、
その場で固まってしまった。
列が進むにつれてツヨシ、そしてJOも、アイヴァンと握手を交わす。
この2人も予想だにしない事態に同じく固まる。
当時、世界のB-Boyシーンについて知識の薄かったGOと佐久間さんは、
相変わらず脳天気に「ヨロシクネ!」なんて盛り上がっていたが、
B-Boy中心の俺達3人組は予想だにしない事態に完全にフリーズしてしまった。
その後俺の部屋に集まった3人。
今でもよく覚えているが、床に体育座りして落ち込む。
「アイヴァンがいたよ!」
「勝てるわけないよ!」
当時のアイヴァンの実力はそれほどまでにすさまじく、恐ろしかった。
例えるならば、俺達の武器がナイフだとすれば、向こうの武器は機関銃。
俺達の武器が拳銃だとすれば向こうの武器はミサイル。
そう書けば分かってもらえるだろうか?
俺達の車が軽自動車だとしたら、アイヴァンの車はF1カーだ!
同じ60kぐらいで走っていたら、
なんだかそこそこやりあえると錯覚するが、とんでもない。
こっちの余力はあと2,30kだが、向こうの余力はあと300kぐらいある。
実力差というか、すでに、人間の身体能力の差が歴然すぎて、
いかに脳天気な俺達でも、とても勝てるとは思えなかった。
いったいこんな怪物を相手に勝つことなんて出来るんだろうか??
End of The Spartanic Rockers Story Vol.022
To be continued
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