俺たちSpartanic Rockersの
波乱万丈な Story vol.020
凸凹5人組 またも急展開!
ドイツで開催される国際的なB-Boyバトルイベント、Battle Of The Yearに日本人だけで参加することになった我々Spartanic Rockers。
JOとGOという2人の新メンバーを加え、新たに5名体制での練習がスタートした。
ここで、また予想しなかった新たな展開が起きる。
4月に参加して準優勝を果たしたスイスのコンテスト、
アーヴァンスキルの噂を耳にしたイギリスのイベントオーガナイザーが大会参加へのオファーをかけてきたのだ。
オーガナイザーの名前はHOOCH。
大会の名前は「UK BREAK DANCE CHAMPIONSHIP」。
後に「UK B-BOY CHAMPIONSHIPS」と名前を改める事になるイギリスの巨大なB-Boyバトルイベントである。
しかし無知というのは恐ろしい。
当時、まだこのイベントの事を全く知らなかった俺は、
BOTYに出る前の肩慣らしぐらいの気持ちで、このイベントに出ようと決めて、皆を説得した。
もちろん、この時も渡航費は全て自費であった。
バイト暮らしの若いメンバーにはとても渡航費を自費で負担する余裕はなく、
今回は俺と佐久間さんが貸す形でまたも無理くり渡航スケジュールを組んでいく。
なお、自費の渡航費をギリギリに抑えるべく、
我々は常に香港や韓国などの経由便を利用して、片道20時間とかそれ以上の長い長い旅をしていた。
さて、9月に行われるUK B-BOY。
この大会を最初の照準に、バトルとショーの準備が始まった。
俺は最初、イギリスの大会は楽勝だと思っていた。
何故なら、イギリスは日本と同様、アメリカがB-Boyを捨てNEW-SKOOLダンスに走った時代にそれに追随した国だからだ。
当時ヨーロッパでBreakin’が盛んだったドイツやスイスに比べると、目立ったB-Boyは老舗クルーのセカンド・トゥ・ノンぐらいだけ。
後はそんなに強いチームはいないだろうと勝手に考えていた。
でももっと根本的な事を言うと、
俺の最大の誤解は、UK B-BOY とうぐらいだから、
イギリスのチームしか出ない大会だと勝手に思っていた事であった。
要は、イギリスのチームだけ倒して、実績を上げ、
BOTYの前哨戦にしようという甘い考えしかなかった。
しかし、オーガナイザーとメールを交換していくうちに
アメリカのスタイルエレメンツが参加するという事が分かってきた。
これはまたショッキングな事件である。
スタイルエレメンツと言えば、当時世界一注目を集めていたチームと言っていいだろう。
97年のBOTYで優勝し、アメリカではラジオトロンというイベントでレネゲイズとバトルしたビデオが大きな話題を呼んでいた。
*97年のBOTYでヨーロッパでもその実力を発揮したスタイルエレメンツ。その斬新なスタイルは世界に大きな影響を与えた。
現代B-BoyのTOP ROCK やFOOT WORK スタイルに革命を起こしたリマインド。
片手ラビットを普及させたダニー(クランブス)、
驚異のパワームーヴコンビネーションを見せるスーパーデイブなど、
どのメンバーも素晴らしい実力を誇る世界最強のチームである。
バトルにはほぼ無敗。
飛ぶ鳥を落とす勢いのSTYLE ELEMENTSのメンバー達。
俺は正直思った
「やべー、スタイルエレメンツが来るって?これじゃ勝てないじゃん」
しかし後から考えれば、相手がスタイルエレメンツでよかったのかもしれない。
何故なら俺は、この強敵を相手に、いったいどうやったらバトルに勝てるかを今まで以上に真剣に考える事になるからだ。
いったいどうやったら勝てるのか・・・・
考えあぐねた上に出した結果は以下の2つである
1.バトルにPoppin’、Lockin’などの立ち踊りを入れる。
2.バトル用のルーティーンを複数作っていく
というものだ。
基本的にはSpartanicのメンバーを集める時に考えたコンセプトと変わってはいない。しかし、スイスのアーバンスキルを経験した後、我々が勝つためのカギはバトルルーティーンであると確信した。
正直なところ、スタイルエレメンツのB-Boy達を向こうに、ガチンコバトルで勝てるとは1ミリも思っていなかった。実力は彼らの方が上である。
ならば・・・
そんな彼らに勝てる方法は無いのか???
・・・そう、1人で勝てないなら2人以上で勝てばいい。
それがバトル用のルーティーンであった。
この当時、バトルでルーティーンを使うチームはほとんどなく、
あったとしても前述したアーバンスキルの対戦相手、
エクストリームが用いたような、非常にシンプルなもの、
「バック転を皆でやる」とかその程度の単純なものがほとんどだった。
日本人の良さは器用さ、緻密さである。
この良さを活かすのは、他のチームが出来ないこと、
そう、「立ち踊りも含めたルーティーンだ」というのが俺が出した結論だ。
早速ルーティーン用の組を作り、各組でのルーティーン作成に入るように指示をした。
しかし、メンバーは、
特にJOとツヨシの若手コンビはルーティーンの練習を本当に嫌がった。
彼らの頭の中には、
「相手がスタイルエレメンツであってもガチンコバトルで勝ってやる!!」
という思いしかかなかったのであろう。
それに、
「ショーの練習もするのに、バトル用のルーティーンなんてもう沢山!!!」
という気持であったに違いない。
程度の差はあれど、B-Boy達はソロの練習が好きである。
そういう特性のダンスだと言ってもよい。
しかし、幸いにも彼らよりずっと年上で、当時すでに30歳であった俺は、
自分達とスタイルエレメンツの実力を比較し判断するだけの冷静さがあった。
例え、当時最高に勢いに乗っていたツヨシ、JOがいても、
リマインド、ダニーなど、世界のTOP B-Boyを相手に、
ガチンコ勝負は出来るだけ避けたい。
男としては、ソロでガチンコで戦うのはもちろん気持ちいいし、
B-Boyならその気持ちは大事にしないといけないが、
これはチームバトルだ。
戦争に例えるなら、
戦車に拳銃で戦いを挑んでも仕方ない。
しかも勝たないと意味がない!
男らしく討ち死にするより、俺は勝利が欲しかった。
End of The Spartanic Rockers Story Vol.020
To be continued
Spartanic Rockers Story 最初のページ
Spartanic Rockers Story 一つ前のぺージ
Spartanic Rockers Story 一つ後のぺージ