ストリートダンスとは??

ストリートダンスとはどんなダンス?

「ストリートダンス」という言葉に対して、
ネット上でもいろいろな定義がされているのを見ます。
沢山の間違った解釈があるので、
今回はこの「ストリートダンス」の定義について書きたいと思います。

まずこのダンスについての世間一般の勝手なイメージとして、
読んで字のごとく、
「道端で踊っているダンス」というイメージがあると思います。

「ストリートダンスとか言っておいて、ストリートで踊ってないじゃないか」
とかいう意見を聞く事も多々ある。

このような意見の人達が言っているのは
「道端で投げ銭をもらって踊っているL.A.やニューヨークなどで見かけるようなダンサーの事」
を指しているのだと思う。

イメージは言葉に直結しているから、
そういう理解の仕方はよくわかりますが、これは大きな誤解です。

Breakin’の創成に多大な影響を与えてきた
ニューヨークのRock Steady Crew(ロックステディクルー)のリーダー
Crazy Legs(クレイジーレッグス)はよく言っています。

 

「ストリートダンスっていういい方はメディアが勝手につけた名前だ。
俺達はストリート(道)では踊っていない。
道で踊っていたら車にひかれちゃうだろ!
もしそういう表現をするならサイドウォーク(歩道)ダンスだろ(笑)
俺たちの踊っているダンスはストリートダンスではなく、
B-Boying(ビーボーイング)だ!」

確かにその通り(笑)

Rock Steady Crew のリーダー Crazy Legs

世の中に浸透している言葉が真実だとは限らない。
メジャーになった言葉が勝手に「真実」とされてしまうわけだ。
これは言葉に限らない。
何かの原因でメジャーになったものを、
メジャーだから真実であると思うのは安直な考えである。

例えば、今ではみんな知っている事であるが、
Windowsが実現している操作性はもともとMACのOSの方がずっと先に開発していた。
Windows の方が圧倒的に普及したせいで、
その特性がWindows発のものだと誤解していた人達も沢山いた。

要するに、
一定の力をもって流布された言葉や事象が、
真実として誤解されて語られることも多々あるわけである。

さて話を戻すが
「ストリートダンスはメディアが作った言葉」とは
至極納得である。

その名前を最初に付けた人が誰かは分からないし、
Legsが文句を言う意味もよく理解できるが、
自分はこのネーミングは逆にとてもセンスがあると思う。

自分の解釈では、ストリートとは
「道路」の事を指しているわけではないと思う。
いわゆる
「一般大衆」の、「町の」文化という意味だと思う。

今は一般的に「ストリートファッション」とか
「ストリートカルチャー」とかいう言葉を使うと思う。
これと同じである。
「ストリートファッション」の「ストリート」とは
「道路」を指しているわけではないという事はだれしも分かるだろう。
要するに町のファッショという意味であり、
町のカルチャーから生まれてきたファッショという意味である。

では町のカルチャー、町のダンスとはどういものなのか?
それは、誰かが作って体系的に上から下に降ろしてきたダンスではなく、
自然発生的に出てきたダンスという事であると言える。
名もない一般大衆達が集まって、
より目立つために、
よりかっこよく見せるために、
より楽しくなるために
自然に形成されていったものの総称が「ストリートダンス」なのである。
もちろん、とっても影響力のある凄く天才的な人がいて、
その人の力で多くの部分が作られたという事も考えられる。
しかし、決して全てではなく、
常に様々な人が持ち込んだ「部分」が
最終的に統合されて「全体の一部」
となるような形成のされ方をしているものが、
「ストリートダンス」なのであろうと思う。

そういう意味では、タップ、サルサ、レゲエなども同じであると思う。

ちなみに、以下はニューヨーク在住の知人
「こーぞー」氏に聞いた話。
英語でストリートダンスと同意義語で「Vernacular Dance」
という言葉がよく使われているようです。
また逆に「Street Dance」に相対するダンスを、
「Academic Dance」とも言うようです。
これは、モダン、バレエ、ジャズといった、
スタジオで教わり継承されてきたダンスと言えると思います。
なお、「Vernacular Dance」とは学術的な表現のようです。
(以上「こーぞー」氏情報)

「Vernacular」とは「方言」とか、「土地の言葉」という意味のようです。
これは自分の言っている「Street」の意味に符合します。
まさに町のダンス、その土地のダンスという意味になると思います。
また、
もともとダンススタジオで体系的に継承されていなかった
町のダンスをストリートダンスと呼び、
その逆をアカデミックダンスと呼ぶのもとても分かりやすいです。

一方この「ストリートダンス」という呼び方は
ブロンクスの「道端」で行われていた「ブロックパーティー」
に起因するという事もよく言われている。
道路で踊っていたブロックパーティーも確かにあったようである。
でもHipHopの成り立ちを考えると実際はちょっと様子が違うらしい。
ニューヨークに行ったことがある人はよくわかると思うが、
向こうにはコンクリー敷きの公共スペース、
バスケットコートも兼ねた公園が町のいたるところに存在する。
当時の野外パーティーは、ストリートではなく、
この「公園」で行われていた事が一番多かったらしい。

そして、もっと言うと、いわゆる本当のHipHopカルチャーの進化は、
ダンスも含め、クラブで行われていたパーティーが基本であると、
当時の事を良く知る人達は言っている。

 

道で勝手に踊りだしたり、公園で皆で集まって踊っていたパーティーでは、
老若男女、子供からおじちゃん、おばちゃんまで集まってきて盛り上がっていたようだが、
クラブはやはり血気盛んな若者達が基本の客層であった。
だからそこでは、
切磋琢磨するバトルや自分たちをリプリゼントする活動が終始行われていたという。
そこで次々とHIPHOPが進化を遂げていったのである。

最初に書いたような、
「道で踊っているからストリートダンス」という定義で考えると
公園でやっていたパーティーで踊っていたのは「パークダンス」?
クラブで踊っていたのは「クラブダンス」??
と言うべきだという話になってしまう。

さて、80年代からこのカルチャーに関わってきた、
我々世代の常識感で言うと、
ストリートダンスのジャンルは
Poppin’(ポップ/ポッピン)
Lockin’(ロッキン/ロックダンス)
Breakin’(ブレイキン/ビーボーイ/ブレイクダンス)
HipHop(ヒップホップ)
House(ハウス)
の5ジャンルが一般的であった。

この定義が現在も成立するかどうかはいささか疑問であるが・・・
恐らくこれは、
ブレイクを「ストリートダンス」という呼び方をするようになった頃から発生してきた
アメリカ生まれのストリートカルチャーとしてのダンスを指していると言える。
だから、町のダンスという意味では定義的に当てはまる
「サルサ」や「タップ」などもこれには入っていなかったのではないかと思われる。

ジャズダンスは、ヒップホップダンスと同じく、
ある意味フリースタイルなダンスであると思うが、
これはスタジオや劇場で踊られる事が多かったので、
「ストリートダンス」の定義に入って来なかったのかと想像される。

ちなみに、日本ではよく使われる
「ガールズヒップホップ」
という名前自体は日本人が勝手に言っている名前で合って海外には存在しない。
またこの「ガールズヒップホップ」という言葉を最初に使ったのは
自分のやっているダンススタジオ、「スタジオフェイス」が発祥で、
97年か98年ごろに最初に使い始めた呼び方だ。
そしてこれは、クラスを女子に限定するという意味で使用し始めたネーミングで、
現在のような、
「女性らしいセクシーな踊り方」を指していた訳ではない。
このように日本独自の方言のような言葉もたくさん存在する。

「誰かが勝手に言った言葉」が
「真実」の様に普及していくという流れである。

自分にはいいのか悪いのかは判断できない所も多々ある。
変化していくのが時代の宿命だから、
ある部分はそれも受け入れていかないといけないと思っている。

ただ、
「道端でお金をもらって踊っているのがストリートダンス」
と言うのはかなり大きな誤解だと思うので、
今回は敢えてこの題材について取り上げてみた。

これから先、自分の想像し得なかった
「新しいストリートダンス」
が登場してくれたら
それは本当に刺激的で、嬉しい事だなと思います。

Special Thanks to Kozo Okumura

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