よし坊さん フォーエバー!!

ストリートダンス界の「ドン」的な存在である
よし坊さん

そのあまりにも急すぎる「よし坊」さんの他界で、ストリートダンス界は騒然となりました。
本当に早すぎる、そして、急すぎる出来事でした。

自分なんか、そこまで近しい間柄だとも言えず、このブログを書くかどうか迷いましたが、自分は自分なりの「よし坊」さんへの思いを書かせていただきます。
これは、自分自身の心の整理でもあります。

「よし坊」さんは、言わずと知れた「BE BOP CREW」の創始者でリーダー(現在のリーダーはSO氏になります。)「よし坊」の「坊」は、 「~ちゃん」とか「~君」とかにあたる言葉のようで、「よし坊さん」は本来おかしいのだと思いますが、とても「よし坊」とはおよびできないので、おかしくても「よし坊さん」で行かせていただきます。

日本のダンス界、よし坊さん、並びに「BE BOP CREW」に影響を受けた人たちがどれだけいる事か計り知れない。
それだけ日本のストリートダンス界においては大きな影響を与えた、「日本ストリートダンス界のドン」と言える存在の方である。

自分が高校生、大学生の頃、いつも練習していた目黒の某所では同じく、BE BOP CREW のノレン分けを受けた「TOKYO BE BOP CREW」(trfのSAMさんがリーダーでした)が練習をしていたので、本家福岡の情報は人づてにちょくちょく入って来ておりました。
しかしながら、よし坊さんなんて雲の上の存在で、ごくまれに目黒に現れた時もお話する機会もありませんでした。
GWINKOというアーティストのPVなどで、BE BOP CREW のダンスを見ては真似をするような、はるか遠くの存在でした。

時を経て、いろいろとお話をさせていただけるようになったのは、いつごろかははっきり覚えておりません。でも、恐らく、うちのチーム、SPARTANIC ROCERS の佐久間さんのつながりがあって仲良くしていただけるようになったのだと思います。
佐久間さんにも本当に感謝しております。

時々お会いしたり、イベントにお呼びしたり、テレビ番組でご一緒したり、練習が同じ場所だったり、夜中に用もないのにお電話したり(笑)、頻度はそれほどでもありませんでしたが、随分と気さくに仲良くしていただきました。

よし坊さんの思い出は沢山ありますが、そのお人柄を表すいくつかのエピソードをご紹介させていただきます。(ギリギリ公に出来そうなものだけです(笑))

個人的に心に残るエピソードで、表面的にはくだらない、たわいもない話ばかりです。
でも自分の心にはどれも深く残っているエピソードであります。
皆さんにはどうでもいい内容かもしれませんが、ご容赦ください。


●エピソード1:後輩をからかう「下ネタ」好きな、よし坊さん
とある日、よし坊さんが上京されて、セイジさん、佐久間さんとショーをするための練習をしておりました。同じ場所で、我々SPARTANICも練習をしておりました。先に練習を終えた自分が、メンバーのツヨシと帰ろうとして、出口のところでご挨拶をしました。
「お先に失礼します。」
よし坊さんはスタジオにパンツ(下着)姿で大の字に寝転んだ状態でこう言いました。

「おー、ツヨシ、お前にキ●タマの新し出し方教えちゃーけん」

この突然の絡みにツヨシがどう答えるかとみていると、奴は冷静に

「あ、大丈夫です。」と流して帰ろうとします。

そこに追いかけるように声をかけるよし坊さん
「おい、メッチャ新しい出し方やけんね~!」

追いかける声を意にも解せず、
「大丈夫です、お疲れさまでした~」と半分無視して帰るツヨシ。

「この2人似てるな」と直感的に感じた瞬間でした。

くだらないけど、自分の心に強く残っている楽しいエピソードです


●エピソード2:自分を「クソ」に例えるよし坊さん
よし坊さんはうちのチームの佐久間さんの事をいつも気にかけていらっしゃいました。
佐久間さんはよし坊さんの後輩として、沢山の思い出があるのだと思います。

「ミヤ(自分の事。宮田のミヤです。自分の周りでこの呼び方をするのは、よし坊さんだけです)、お前、佐久間は元気しとうとや?」
「あやつはほんとクソやけん。まぁ、俺がクソやけんあいつはゲリたい。最近はようやく形が出来たごたーばってん、
俺もクソやけど、このクソの匂いばいい匂いって言ってくれる人もおるとたい。」


この時、一緒に車に乗っていたSO君がすかさず突っ込んでました。

「よし坊はダンス以外はホントにクソですからね(笑)」

なんとも汚い例え話でしたが、佐久間さんへの愛情と、SO君のよし坊さんへの愛情、よし坊さんのこだわりを感じられる話しとして、自分の心に強く残っております。


●エピソード3:チキンの部位にこだわるよし坊さん
これは佐久間さんから昔し聞いたお話です。
佐久間さんから改めてお話をいただいたので、佐久間さんの言葉で載せさせていただきます。

佐久間さん談:
ヨシボーは
「黒人はブレストよりウイングが好いとうけん、俺はウイングを食べるったい」
と言いながら、カバンからタバスコ出して食べていた。
事実当時、黒人はマイタバスコをよく持ち歩いてた(笑)

俺がこのエピソードに気づいたのは、自分がニューヨークに住んでた頃にできた、黒人のダンサー友達と一緒に「ポパイズ」っていうチキン屋に行った時の事。
その黒人が「ブレスト」を頼んでたから、俺はヨシボーから聞いてた話を思い出し、
「黒人はウイングが好きなんじゃないの」って聞いたら、
「今日はお金があるからブレストを頼んだけど、いつもは黒人はお金持ってないから仕方なくウイング頼むんだよ」って言っていた。
そのくらいヨシボーはダンスだけではなく、黒人の日常的なライフスタイルから、黒人を目指してたというお話しです。
俺はその事実をヨシボーには伝えてないので、今でもヨシボーは真面目に、「黒人はウイングが好きだ」と信じて天国に行ったと思われます・・・

黒人の真似してたらダンスが上手くなると思い込んでた。

***以上佐久間さんからのエピソードです****

現代の人にはもしかしたら分からないかもしれませんが、インターネットも無い我々の時代は海外の人達の情報に触れる事があまりできませんでした。そんな我々は数少ないダンサーの情報を、何から何まで真似したものです。踊り方はもちろん、歩き方や立ち振る舞い、ファッションも当然真似しておりました。そうする事で踊りの上手い彼等に少しでも近づけると思ったからです。(そんな訳はないんですが (笑))

よし坊さんは黒人の人達のカルチャーに憧れるあまり、チキンの買い方も真似していたんだと思います。そのあふれる純粋な気持ちに、密かに心を打たれた自分でした。

●エピソード4:自分に「ダンスが好きだ」と語りかけるよし坊さん。
これはまだ自分がよし坊さんとお話しするようになって、それほど時間が経っていない時の事だと記憶しております。
当時よく行っていた六本木のダイニングバーでご一緒させていただいた時の話です。
飲みながら、いろんな話をしていたかと思いますが、その話の中で、よし坊さんは僕にこう言いいました。

「ミヤ、俺は本当にダンスがすいとーったい。」

多分よし坊さんは当時42,3歳だったと思います。
この歳になって、俺みたいな10歳も下の後輩に、こんな純粋な言葉を言えるよし坊さんの素晴らしさ。この言葉を聞いた瞬間に、「よし坊さんは本当にダンスが好きなんだな」と心から感じました。

先輩達の中には、本当にダンスが好きな人達がいらっしゃいます。
セイジさんも、佐久間さんもそういう先輩だと思います。
自分もダンスが好きですが、こういう凄い先輩たちに比べれば、恥ずかしくて「ダンスが好き」とはとても言えないレベルだと思います。


●エピソード5:優しい言葉をかけてくれるよし坊さん
横浜のあるダンスイベントでご一緒した時のお話し。
踊りが終わって一緒に飲んでいると、よし坊さんはこう言いました。

「いやー、俺たち未来の分からん身やけん、今後は仕事もなくなったらダンボール生活になるかも知れんけん。ばってんそんなダンボール生活になった時に、今日お前とこうやって楽しく飲んだことを、あん時は本当楽しかったっちゃんね~ って思い出すけん。」

自分と楽しく飲んでいただいて、かけてくれるこんな優しい言葉、ずっと胸に残っております。


●当たり前だが、ダンスが素晴らしよし坊さん
そんなよし坊さん、過去の踊りの映像が沢山FBなどでアップされております。
自分の知らないビデオもあって、凄いなと思いながら見ておりますが、自分が最も好きなのは昔フジテレビ系列で放送されていたDANCE DANCE DANCE という番組のゲストショーです。

この時の BE BOP CREW、メンバーは、よし坊さん、RICKYさん、SO君、SUSUMU君、PEET君の5名。カッコ良すぎて本当にヤバかったです。
この曲で、この踊り方。当時として考えればそのフュージョン具合が全く新しく、真似できない洗練されたセンスが感じられました。
あまりのかっこよさに、大学生だった自分はそれを全部コピーして踊っていたものでした。
当時のよし坊さんは恐らく、33、4歳だったと思われます。
自分はこの当時のよし坊さんの歳をとっくに超えましたが、いまだにあの作品に勝てるものを生み出す自信はありません。
よし坊さんの存在感、センス、そしてBE BOP CREWのかっこよさを心から感じた作品であり、今もなお時々見返しております。

そんな、素敵で、愉快で、かっこよくて、センスが良くて、優しくて、メチャメチャで、エロで、ダンスが超上手くて、人望が厚くて、皆に本当に好かれている先輩、よし坊さんが急に亡くなってしまいました。
金曜日にお亡くなりになり、土曜日の昼ぐらいにその事を知って、日曜日の告別式に福岡まで駆けつけました。
突然すぎて実感が無く、その時は悲しみも湧いてきませんでした。
事実を受け入れる事が出来なかったんだと思います。

でもその後、東京に戻って、ふと気付けば、「ぼーっ」としてしまっている自分に気づきます。悲しみとは違うし、涙も出てこないけど、なにか大事なものが抜け落ちてしまったような感覚を覚えました。
言いようのない、「喪失感」でした。

自分は冒頭にも書きましたが、そこまで頻繁にお会いするような間柄ではなかったのですが、それでもずっと憧れてきた、そして沢山思い出をいただいたよし坊さんへ対する尊敬の気持ちがとても強かったんだと改めて思いました。

もっと近しい人達や、ずっと一緒にやってきた BE BOP CREW の皆さんの喪失感は自分の比ではないと思います。

かける言葉が見つかりません。

自分は、いい歳こいて、よし坊さんのような素晴らしい先輩の足元にも及びません。
今後追いつけるとも正直思っておりませんが、それでも、凡人なりに、少しでも先輩のかっこよさを引き継げるようにしていきたいと思います。

僕にとって、
多くのダンサーにとって


永遠のヒーロー「よし坊」さん


また、次にお会いした時には一緒に飲んで、バカ話聞かせてください。


沢山の思い出と、素晴らしいダンス、ありがとうございました。

 

END OF THIS STORY