World of Dance Final 2019 Part 1

2019年7月  久々のU.S.A.
今回の渡米のメインのミッションは、LAで行われているWorld Of Dance という世界でもかなり注目度の高いダンスコンテストのサポートのためです。
日本で開催された予選を勝ち抜いたチームが、決勝大会に出場するに際して、スムーズにイベントに参加してもらうべく、日本のスタッフがサポートをするのですが、そのサポートを手伝ってほしいという主催の鍵谷君からの要請を受けて同行させていただきました。

このイベント、日本で開催されたいくつかの予選ではジャッジとしても参加させていただきました。
よって、自分がジャッジしたイベントを通過したチームがファイナルに臨んでいくという事で、なかなか思い入れもあります。


そんな日本からの参加チームは大活躍で、
結果から言うと、現場で開催された最終予選を10チームが突破し、決勝では優勝と2位を日本チームが獲得するという大活躍ぶりでした。


今回は、そんなWODの舞台裏を経た自分の感想と、大事な意見を書いておきます。

現場での自分の最大の仕事というのは、日本からの参加者の人達がスムーズに演技ができるようにサポートするという事です。
具体的に言うと、
出番前にちゃんとメンバーがスタンバイしているか確認する。
本番時に音源をキックする担当者の横について、キュー(スタートの合図)を出す。
早替えや上下移動があるナンバーに関しては、演技中舞台袖に人が立ち入らないようにする。
等の作業です。

日本からのスタッフは日本チームのサポートに複数人で対応していて(こんな対応をしているのは日本チームだけですが)、出番の確認などは、他のスタッフがやってくれていましたので、自分は主に舞台裏の状況確認とキューだしなどをしておりました。

しかしながら、この早替えや、上下移動があるチームのサポートは大変神経を使うものでした。何故なら、多くのチームが非常にタイトな構成を組んでいたからです。
早替えも、上下移動も一歩遅れたら出とちってしまうような演出がかなり多かった。
これは相当リスキーな事だと個人的には思う。


自分は昔から海外の大会に多く参加し、世界の様子というのを目の当たりにしてきた。
ジャズやコンテンポラリー、バレエなどの現場は全く分かりませんが、ストリートダンスに関して言えば、良くも悪くも運営はかなりラフです。
良くも悪くもというのは、運営が相当ラフな分、ある程度融通も利くというところです。

舞台裏には、多くの関係者や、関係者の友達など(要するに関係ない人達)が常に用もなく出入りしていたりします。

例えば、MCの友達がイベントの最中に「よー、元気?」なんて感じで登場するなんて当たり前のことです。(今回も実際に何人も来ていました)
スポンサーや、主催者関係のスタッフが舞台袖で見ているとか、楽屋から出入りしたりとかはもちろん当たり前にある事です。
そういう状況下で、10秒遅れたら出とちってしまうようなタイトな構成をするのは本当にリスキーだと思います。

現地アメリカのスタッフ達には、
「次は早替えとか、舞台裏の上下移動があるから、人を入れないでくれ」と毎回頼んでいたが、彼らは分かったといいながら、そこまで厳格には管理してくれません。
一応やってはくれますが、イレギュラな事への対応はしないし、前のチームが終わった後に廊下を塞いでいても退避させてくれなかったり、両袖にかわるがわる入ってくる様々な関係者や無関係者を止めたりするというような事はありません。

でも、これはある意味当然の事です。

イベントの関係者やスポンサーや、スタッフが舞台裏の楽屋を利用するのは当たり前だし、その出入りを制限する権限など本来我々日本からの参加チームには全くありません。お願いする事はもちろんできますが、それがうまくいかなくても、彼らを責める権利はないと思う。

参加者の皆さんには、そういう事も念頭にいれて、作品を作ってもらいたいと思います。

要するに、早替えや移動のリスクを織り込み済みで作るのは、海外の舞台では当たり前のリスクヘッジだと思う。
10秒、20秒遅れたら出とちってしまうような構成は、このような環境では本来無理のある構成だと思い、回避すべき内容です。

たぶん日本の主催者、鍵谷君は、こういう日本チームのタイトな構成の状況も含めて自分にヘルプの要請をしてきたのだと思う。
何故なら、俺が英語がちょっとしゃべれるし、図図しく場を仕切る事を知っているからだ。
これは彼の、日本予選を勝ち抜いたチームへの最大限の配慮だったと思う。

そんな鍵谷君の気持ちや、日本チームのタイトさを知っていた俺は、早替えや移動があるチームの演技の時は、勝手に舞台裏を仕切る(笑)

本来主催者でもなく、参加者のサポート役の日本人スタッフ達が
総出で舞台裏をロック。

直前に踊って、疲れてへたっている前のチームは大声で呼びかけ外に退避してもらい、
セッティングが長いチームの時は、MCに話を引き延ばしてもらい、
上下の出入り口は日本人スタッフで完全封鎖して人が入って来られないようにして、
舞台袖にいる関係者やスタッフに関しては可能な限り干渉しないように退避してもらうなど・・・

彼らは、皆理解ある、いい人たちだったので、
「いいよ、いいよ」と協力してくれましたが、
これは本来自分も含め日本のスタッフが出来る権限をはるかに越えている、
・・・と言うよりも、
全くない権限を勝手に行使している状況だと思う。

素敵な演出のために、タイトな早替えや上下移動をしたいという振付、演出家の気持ちはもちろん理解できますが、
何が起こるかわからない海外の、
それもストリートダンスの舞台において、
タイトすぎる演出はあまりにもリスキーです。
もし、日本人スタッフの舞台裏への立ち入りが禁止されたらそれで全てダメになる可能性すら秘めております。
なにより海外は、日本とは全く違うと思って、
最大限リスクヘッジをして臨んでいただくのがベストです。


日本では当然の事は海外では当然ではないのです。
例えば上下の移動導線がなかったらどうするかとか、
舞台袖がほとんどなかったらどうするかとか、
そういう想定外の事が十分考えられると思って臨んだ方がいいと思います。


自分の経験したケースで言えば、
フランスの大会では、音源はMDでもって来ればいいと言われたが、(その当時個人がCDを焼く技術は普及してなかったので)、実際に行ってみたらMDプレイヤーがうまく動作しなくて、音かけられないという話になった。

1万人近く入るでかいイベントでの話ですよ。

俺はこんなこともあろうかと、ポータブルのMDプレイヤーと、そのイヤフォンジャックから分岐する、赤白のステレオプラグまで用意していたので、そのセットを音響につないで事なきを得ました。

ちなみに、海外のイベントに参加する際は、使用する楽曲を複数のメディア(カセット、MD、CD等)に録音して、それを更に複数用意し、万が一荷物が無くなっても大丈夫なように自分以外に2名ほど選抜して更に手荷物と預ける荷物に分けて入れさせたりしていました。
現場に行って、音がかけられないのは確かに音響スタッフのせいかもしれないが、それでショーができなかったら何の意味もないからです。
現代は、さすがにそこまでやらなくてもいいけれど、自分達がやろうしているショーケースを何らかのトラブルがあっても無事やり切れるようなリスクヘッジは絶対必要だと思う。


海外では、イベント当日になって会場が変わってしまったりとか、
そんな「とんでもない事件」すら実際に起きる事があります。
それが、いいという意味では決してありませんが、
それでも、現場ではやらなければいけないケースがあるという事です。


練習を積んでせっかく臨む最後の舞台です。
ほんのちょっとした計算違いで想定していた演技ができなくなるような作りはあまりにリスクが高すぎると自分は考えます。

皆さん、いろいろ意見はあると思いますが、これは自分の、海外イベントに複数参加してきた人間の個人的な意見として参考にしていただければ幸いです。

自分の、ある意味無茶苦茶強引なオペレーションに協力してくれた現地の関係者と、日本人スタッフのおかげもあって、大きな事故もなく、全ての演技は計画通りこなせたのではないかと思います。

協力してくれた皆さんには本当に感謝でした。
なんの権限もないのに舞台裏を仕切りだす俺に、気さくに対応してくれるのが「ラフ」なイベントの良さでもあると思います。
厳しいイベントでは、舞台裏に我々が入ることも制限される可能性が高いです。
むしろ、その方が自然かもしれない。
そして繰り返しますが、こんな強引はオペレーションが毎回できるとはちょっと思えない。
着替えや移動があるのは構わないと思いますが、それをするのであれば確実に時間に余裕をもった作りにしていただければなと思います。

ちなみに早替えや、上下移動がないチームの時は
一応何かあったときはすぐに袖にいけるようにと、
舞台袖に一番近い客席で日本人チームのダンスを全チーム見ておりました。

どのチームもこの大会にかける意気込みが伝わってくる、素晴らしいダンスだったと思います。
しかし、他の国から参加しているチームの方々も同じような熱い気持ちで踊っているのです。
そんな厳しくも激しいダンスの戦い。
ダンスに対する様々な異なるスタイルや考えが交錯する現場でありました。


END OF THIS STORY
TO BE CONTINUED

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