大混乱のバトル! Spartanic Rockers Story Vol.056

俺たちSpartanic Rockersの
波乱万丈な Story vol.056

1999年、韓国で初めて開催された国際的なダンスイベント

“World Hip Hop Festival” いよいよ本番当日

スタジアムに建てられた立派な舞台でショーやバトルが展開されることになる。

*TOP の画像
様々な国から集まった参加チームとの一枚!
BAG OF TRIX、CIRCLE OF FIRE など、そうそうたるメンツ!

韓国初となるストリートダンスの国際大会は、残念ながら集客が今一つではあったが、会場を占める観客のうち、かなりの人数が韓国チーム、People Crew(ピープルクルー)の女性ファンであった。
彼女達の多くは風船をもって、それを振りながら「キャーキャー」と黄色い声援とともに応援をしており、通常のダンスイベントとは異なるある種異様な光景でもあった。

世界各国からブレイクのチームが集まってきている、韓国初の国際大会ではあったが、
日本と韓国だけは何故かヒップホップとブレイクの連合チームという謎の展開。
本来バトルのトーナメントはショーのスキルで決めると聞いていたが、バトルのカードは最初から日本対韓国で仕組まれたものであったと思われる。

俺はまだ韓国チームの全貌を理解していなかったため、正直油断していた。
ある意味余裕で勝てるのではないかとタカをくくっていたのである。
これは俺だけではなくうちのメンバー全員そうだったに違いない。

そんな油断した気持の中で迎えたバトル。
最初に出た佐久間さんはのっけから相手のペースに持っていかれる。
実力では全くレベル違いの状態ではあったが、相手のペースにハマったと言ってもいい。
今から考えると、もしかしたら、韓国チームは当時まだバトルのやり方をしっかりと理解していなかった可能性もある。
そういう意味では仕方なかったのかもしれないが、バトルのやり方は終始ひどいものであった。

一発目から佐久間さんの踊りに被せて踊ってくる韓国チームのダンサー。
バトル中に佐久間さんの股をくぐりにくる。
これは恐らく映画Breakin’の中で、シュリンプがピートの股下をくぐる下りを真似したのではないかと思われる。

実際のバトルでは、相手が踊っているのを邪魔してはいけないのが基本のルールである。
踊り終わった後に順番に踊っていくのだ。
これはSpartanic StoryVOL.43 でも描いたOLD SCHOOL NIGHT での対Bronx戦も同じような状態であったが、こちらが踊っているのに平気でバトルフィールドに出てきたり、踊っている最中にルーティーンをはじめたりするのは今では常識的にあり得ないひどいマナーである。

この当時はまだダンスバトルというものがそこまでメジャーではなかったため、彼らはもしかするとバトルのやり方が分からなかったのかもしれない。

 

83年に公開されたダンス映画、Breakin’(邦題:ブレイクダンス)のバトルシーンでは、敵役のタコとピートの踊りに対して、主演のシュリンプとシャバドゥーが割って入っていくシーンが多々ある。当時ダンスを始めたてだった俺は「バトル」とはそういうものだと勝手に誤解したものだ。
いや、俺だけではなく、多くのにわかバトラーたちが勝手にそうだと思いこんだのである。
ダンスバトルと言うか、ストリートダンス自体が日本に入りたてだった83年当初はそんな状況であった。

この辺がメディアのもたらす大きな誤解である。
どだい、演出されて、段取りが決まっている映画だから出来る内容である。
段取りがない相手に対して、そんな上手くバトルが展開していくわけがない(笑)
今では常識的なバトルのマナーも、ストリートダンスカルチャーが入りたてのの韓国では仕方なかったのかもしれないが、この後バトルは、いわゆるダンスバトルの様相を呈していないひどい状況になっていく。

 

一番手に出てきた佐久間さんにかぶせて踊りだした韓国のPOPPERにつづき、2番目にはDEFのKATO(現在D’OAM)が登場するも、同じく韓国のダンサーが被せて同時に踊りだしてしまう。
これではバトルにならない。
KATOもこれには頭に来たに違いない。
相手のダンスを邪魔しに行く。

3番目に出た俺のソロからは少し通常のバトルらしさを取り戻す。
続くツヨシはオリジナルのトップロックスタイルからオリジナルのノーハンドドリルで決める!
続くシンさん、アクロバットちょっと失敗。
そこに韓国チームはアクロバットで返してくる。
この辺りはバトルの定石通りであり、しかも韓国チームのスキルはかなりの高さであった。

バトルのやり方が最も酷かったのはこの後のDEFがルーティーンを始めた時であった。
踊り始め直後に、韓国陣は全員でステージに乱入し、ルーティーンの邪魔に入る。
全く踊れない状況。
実はこのDOMINIQUE(ドミニク:現在ERECTRIC TROUBLE)のソロから始まるルーティーンの後に、我々が韓国到着後に突貫で作ったDEFとSpartanic全員でのルーティーンが用意されていたが、韓国チームの酷い妨害のために出せずじまいで終わってしまう。

続いてスパルタニックロッカーズ、スイスメンバーのRemyが登場。レミーのチェアーフリーズの後全員がそれを飛び越えていき、最後にシンさんがアクロバットで飛び越えるという段取りであったが、韓国到着後の短い時間でバトルの練習をした我々は、意思の疎通がきちんととれていない。
結果Remyはフリーズの後、かなり待たされるはめに(笑)
ここでも邪魔しに来そうな韓国チームをツヨシは押さえにかかっている。
その後登場するNAOも得意のハンドグライドを見せるが、これも本来の調子とまではいかなかった。

我々は完全にペースを乱されていた!

シンさんやNAOは初めてのバトルの舞台に飲まれて本来の実力を出し切れていなかったし、我々スパルタニックのレギュラーメンバーも予想外の展開(韓国チームの邪魔)に気持ちをもっていかれてしまっていた。
加えて、突貫工事で作ったDEFとのルーティーンは意思疎通が上手く図れない状態。
韓国チームのバトルのやり方がひどかったのは間違いないが、それによって我々日本勢が完全にペースを持っていかれてしまっていたのも、また、事実であった。

結果このバトルは初戦の韓国戦で敗退するという残念な結果となる。
いろんな意味で、不完全燃焼感がとても強く残るバトルとなってしまった。

 

大会はその後、韓国チームを破ったBAG OF TRIX(バッグ・オブ・トリックス:カナダ) が CIRCLE OF FIRE(サークル・オブ・ファイヤー) を破った U.S.A. DREAM TEAM と決勝を戦い、大方の予想通り、U.S.A. DREAM TEAM が優勝を飾ることになる。

 

後日談としては・・・
このイベント、バックには怖い人達がついていたという話しで、
オーガナイザーのシェルダンという黒人が大会後にシバカレていたという話や、
優勝賞金が支払われなかったなどと言う話も聞いている。

韓国初上陸のバトルイベントは、現場も、バトルも、かなりの混乱をきたしていたが、
素晴らしい考えを持つBAG OF TRIX や、完全に新しいやり方で踊るCIRCLE OF FIRE を目の当たりに出来たのはとても大きな刺激であり、収穫でもあった。

カムサハンムニダ である。

*NAOは残念ながら2012年にに若くしてこの世をさっている(R.I.P.)

End of This Story
To Be Continued


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