俺たちSpartanic Rockersの
波乱万丈な Story vol.031
斬新なショーを作ろう!!
UK B-BOY CHAMPIONSHIPS で 無敵のチームSTYLE ELEMENTS を倒して凱旋帰国を果たした我がSpartanic Rockes。
我々、アンダーグラウンドのダンス界では相当な快挙であったが、当時はメディアなどでもほとんど取り上げられることはなかった。
ネットもまだそこまで普及していなかったため、ホームページなどを見ている人もそこまで多くなく、スマートフォンはもちろん存在しなかったし、YOUTUBEやSNSも存在しない時代である。
我々の快挙はヨーロッパでは大きなニュースとして伝搬されていたようだが、日本では大きく広まることはなかった。
この当時のストリートダンスは、かなり限定された人達がやっているカルチャーであって、現代のように子供たちが習い事でやるような普及の仕方はしていなかったのである。
さて、我々は次の世界大会であるドイツで開催されるBattle of The Year に向かっていく事になる。
このバトルイベントはヨーロッパでもかなり大きく、世界各国からの参加チームのある
大会である。
我々がUK B-BOY CHAMPIONSHIPS で勝利を収めた相手チーム、STYLE ELEMENTS も前年の97年に優勝を収めている。
しかも大会開催までには2か月しかない!!
これには当然気合を入れなおして臨まないといけない。
前にも書いたが、当時のヨーロッパのコンテストの方式は、まず全部のチームがダンスのショーケースを行い、そこから上位4チームがピックアップされる。
4チーム中、下の2チームが3位決定戦を行い、上の2チームが優勝決定戦を行うというスタイルであった。
バトルのトーナメント制が一般的になってきている昨今と違い、ショーケースで上位2チームに入らないとその時点で優勝はあり得ないのである。
それだけショーケースが大事だという事だ。
UK B-Boy Championships でも独自のショーケースを行った我々だったが、ここはもっとブラッシュアップして、斬新なショーを作ることにより、更に確実性を高めたい!
という事で、新たなショーの制作にとりかかった。
この当時は六本木や横浜のダンスイベントにSpartanicでよく呼んでいただき、ショーを行っていた。
大きな大会を目指すときは、まずこういった国内イベントに向けてショーケースを作り、その後それをブラッシュアップするという方式をとっていた。
自分達であんまり良くないと思うところは捨て、あらたに新しいショーを作って組み込む。いいと思うところは引き継いでいくというやり方である。
ショーを重ねるごとに少しずつ足したり引いたりしながら、完成度を上げていくという方法であった。
実際のイベントで踊ることで本番を経験するとともに、新しいルーティーンを考えつつ、観客の反応も見るという一石二鳥の方法であった。
これにより大会が近づくにつれてショーはどんどんブラッシュアップされていくのだ。
さて、UK B-Boy Championships ではニュースクールヒップホップのステップダンスもショーの一部に入っていたのだが、これについては、大胆に切り捨てて、新しいショーを作る事になった。
そこで、考える。
日本人といえば何か???
日本といえば世界でゲームが有名。
ならゲームからなにか使えるものがないだろうか。
いろいろ考えた末に、今回は当時はやっていたゲーム「ストリートファイター」をモチーフにショーを作ろうというアイデアにたどり着いた。
このゲームの音源をアレンジして、ゲームの格闘シーンをダンスで再現するという発想である。
しかし、音源の制作は自分では不可能。
今でこそPCで簡単に音源制作が可能で、いろいろな音源素材もネット上から入手できる状況であるが、1998年当時はネットも普及していない世の中である。
PCで行う音源編集ソフトも非常に高価で、一般人が入手できるレベルではなかった。
ここで我々が頼るのはDJの力である。
スパルタニックは常に複数のDJや音楽制作に関わる人達の力を借りてショー用の音源を作っていた。
今回のショーの肝となる格闘シーンの音源は、ツヨシやJOともともと同じチーム、FREEZE(フリーズ)で活動していた乾(いぬい)に頼むことにした。
乾はダンスをやめてDJの活動にシフトしてた。
さて、この音源制作はかなりアナログで大変なものだった。
PCで音源を作ることができないため、乾のもっていたゲーム機で実際に「ストリートファイター」をプレイをし、「殴る音」や「せりふ」をサンプリングマシンで録音する。
次にサンプリングマシンについているパッドを叩いて録音していた音を出し、それをMTRとう機械で重ね録りしていく事で、完成させていくのである。
かなりの手間とセンスも必要な作業である。
乾は俺達のわがままなリクエストを聞きながら、
後ろでふざけたりしているツヨシやJOに気を取られることもなく、
黙々と音源を仕上げていってくれた。
この「戦いをダンスにとり入れる」という事と、そこに「ストリートファイターの音源を使用する」という発想は後に多くのB-Boy達に影響を与えることとなるが、この時はそこまでの話になるとは考えてもいなかった。
ただ、自分たちなりにはとても斬新で、面白発想と企画だという思いであった。
乾の協力でBOTYを前に、また新しい発想でいい音源を作ることができ、俺はワクワクした気持であった。
End of The Spartanic Rockers Story Vol.031
To be continued
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