ヒップホップダンスを定義してみる Vol.1

HIP HOP DANCE とはどういうダンスなのか。

今回はヒップホップダンスの定義について考えてみたい。


よくHIP-HOPのダンスについて「このダンスは自由なんじゃないですか?」という人がいる。自分の経験上、こういう発言をする人はたいていHIP-HOPについての理解が浅い。

「自由」というのは、「ある一定の範囲内での自由」を指しているのであって、なんでもありの自由ではない。
完全に自由なダンスは、コンテンポラリーダンスである。

 

逆に言うと、「ヒップホップは自由なんではないですか?」

という人にとって、果たしてヒップホップの定義は何なのだろうか??

(関連記事:ダンスジャンルについての考察


「そんなもん定義する意味あるのかよ。雰囲気でしょ!」

という声が聞こえてきそうである(笑)

そうなんです。我々世代は「雰囲気」で覚えてきたんです。
しかし、残念ながらこの雰囲気というものは抽象的過ぎて伝わらず、自分から見てヒップホップでないものがあまりに多く日本に蔓延しているので、ここは敢えて分析し文章化することで、少しでも自分たちの思うヒップホップダンスを世間に理解していただこうと思ってチャレンジしてみます。


ヒップホップは70年代、N.Y. のサウスブロンクスでカルチャーとして自然発生的に生まれ、その後爆発的に世界に広がっていった。

40年程度の短い歴史の中で、その音楽は変化し、当然のように音楽に合わせて踊るダンスも変化していく。

ダンスで言うならば、もともとはB-Boying(ビーボーイング/ブレイクダンス)が唯一のヒップホップダンスであった。時とともに様々な事象を経て、現在はステップを踏みながら踊る、基本的に「立って踊るダンス」をヒップホップダンスと呼ぶようになり、B-Boyingは別のカテゴリーとして扱われるようになってきた。現代のヒップホップダンスは当初はフリースタイルダンスと言われていた。

要するに、発生当時のヒップホップダンスと今のヒップホップダンスは全く違うものになっている。

 

時代とともに変わっているとすれば、そこに共通の定義はあるのだろうか?

Buddha Stretch – Elite Force

ある時、ストレッチ(ヒップホップダンスのオリジネーター、エリートフォース/モップトップスの中心人物)に敢えて質問したことがある。
なんでフリースタイルダンスを、ヒップホップダンスと呼ぶようになったの?
そうしたら彼から本当にシンプルな答えが返ってきた。

「ヒップホップミュージックに合わせて踊るからだよ」

あまりに当たり前の答えであるが、自分にとっては目から鱗が落ちるような言葉だった。

もともと、B-Boyingをヒップホップダンスと呼んでいた事はストレッチもリアルタイムで知っている世代である。そんな彼等からしても、フリースタイルダンスがヒップホップと呼ばれるようになる流れに特別な事なんかないという事だ。
ダンススタイルがどうのこうのという話しではなく、ヒップホップの音楽に合わせて踊るのがヒップホップダンスであるという見解は、要するに、

 

音楽が最初にあって次にダンスがあるという事だ。

 

ダンスが音楽から離れて独立して存在している訳ではないという事の表れである。


■ヒップホップダンスの定義その1

ヒップホップミュージックに合わせて踊るダンスをヒップホップダンスと呼ぶ。


では、ヒップホップミュージックに合わせて踊れば全てヒップホップダンスなのかというと、答えは「NO」である。

ロックダンス(LOCK DANCE/LOCKIN’)をヒップホップミュージックに合わせて踊ればそれはヒップホップダンスなのか?
答えは「NO」である。
HIP HOP MUSIC に合わせて踊っても、LOCK DANCE は LOCK DANCE である。

という事は、また別の要素がダンスの定義づけに必要だという事だ。

ロッカーズは、バレエの動きをLOCKに取り入れている。
ブガルズは、LOCKのステップをモチーフに踊りを開発している。
エリートフォースは、ロックやポップのテクニックを自分たちの踊りに取り入れている。様々な踊りはクロスオーバーし、影響しあって新しい形を成しているわけだ。
しかしながら、そうやって「自由」に取り入れられたそれらの要素は、各ジャンルによって咀嚼(そしゃく)され、消化されて新たにアウトプットされてきたものであり、決して持ってきたものをそのままやっている訳ではない。その「ジャンルらしさにリメイク」された後にアウトプットされているのである。

要するに、ジャンルにはジャンル独特の「らしさ」とういうものがあるのだ。

そもそも、そうでなければジャンル分け自体の意味が無くなってしまう。この「らしさ」はかなり抽象的なものなので、文章化するのが困難である。

我々はよく、B-BOY FLAVOR(フレイヴァー)とかHIP HOP FLAVOR とかそういう風に表現する。日本語にすると、「風味」の事であるが、「におい」と言ってもいいかもしれない。これは冒頭に書いた「雰囲気」と同じ事である。

では、その「フレイヴァー」とはどこから出てくるのだろう。


ヒップホップダンスを定義してみる Vol.2に続く

ヒップホップダンスを定義してみる Vol.2