ダンスジャンルにつての考察 Vol.1

Hip Hop って本当に自由なダンスなの?

ダンスジャンルにつての考察 Vol.1

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「ダンスにジャンルは必要か」という話題は以前もブログに書いておりますが、これを再編/追記して改めてここにアップします。

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よくやり取りされる内容で、

「Hip Hopは自由なダンスではないのですか?」

という話を聞くことがあります。

この言葉の裏には、

「ジャンルなんてどうでもいいじゃん。自由に踊って何が悪いの?」

という気持ちが込められていると思う。

個人が自由に踊ることにはなんの規制もありません。

しかし、本当の意味で「自由なダンス」は、日本ではコンテンポラリーダンスの領域に入ります。

そういう意味では、Hip Hop Dance は自由なダンスではありません。

Hip Hop Dance の「特定された領域の中で自由」なだけです。

それはどのジャンルでも同じ事ですが、

「Hip Hopは自由なダンスではないのですか?」という人は、

「特定された領域の中で自由」だという事を理解していない、「自由」の部分をはき違えている事が多いです。

 

「自由なダンスがダメだ」と言っているわけではありません。

そういう事を言う人の言っている「自由なダンス」は「Hip Hop Dance」ではないと言う事を言っているのです。

「自由なダンス」を突き詰めていくと「ジャンル」という考えは崩壊します。

それは一つのやり方、考え方としてはいいと思います。

では「自由なダンス」がいいなら、ダンスにジャンルは必要ないのか?

自分は、個人的には「ジャンル」は絶対に必要だと思う。

 

なぜならそれは、各ジャンルによって探求する部分が全く異なるからだ。

 

例えば同じ食べ物であっても、「カレー」と「ラーメン」は全く違う。

それぞれに特徴があり、それぞれに良さがある。

良さは全く違うから、それを同じ視点で図ることはできない。

「美味しいカレーを作る」事と、「美味しいラーメンを作る」事は、食材から下ごしらえ、調味料から、作り方まで全く異なってくる。

当たり前である。

それぞれの料理への追及が、「おいしいラーメン」や「おいしいカレー」を作り出すわけで、「おいしいラーメン」のメソッドが「おいしいカレー」のメソッドにそのまま活かせる訳ではない事は誰でも分かるだろう。

 

そして、「おいしいカレー」は、カレーとして美味しさを追求したゆえに、「おいしいカレー」にたどりつけたのである。

決してラーメンと同じ味の追及をしてきた結果ではない、

これはダンスでも同じである。

 

一部の共通点を除いて、バレエのメソッドがそのままヒップホップダンスに活かせるわけではない。

例えば、ジャズダンスやバレエは重心を上に持っていくことによって体の線の美しさを出し、足元が軽く動けるようにしている。

ヒップホップのステップダンスは完全に逆で、重心を下に持っていくことによって動きの重さを表現している。要するに、目指している最終地点が異なるので、その最終目的地への行き方(ここでは表現の仕方、体の使い方)も異なるのである。

重心の話に関して言えば、ジャズやバレエで大事な事と、HIP HOPで大事な事は相入れなくて、共存不可能である。

 

バレエとヒップホップ程違いがない「ストリートダンス」の中に限って考えた場合でも同じことが言える。

ロックダンスのメソッドがそのままブレイクダンスに活かせる訳ではなく、ブレイクダンスのメソッドがそのままヒップホップダンスに活かせるわけではない。

それぞれのジャンルではそれぞれの追求の歴史の中で、変化、進化し、そのダンス独特の特徴を持っている。

各ジャンルはお互いに影響し合ってはいるが、各ジャンルならではのアイデンティティというものが確立している。

この、「ジャンルならではのアイデンティティ」は非常にあいまいである。何故なら我々の行っている「ストリートダンス」は特定の人や団体が踊り方を決めて作っている訳ではなく、様々な人によって自然発生的に作られてきた文化(カルチャー)であるからだ。

ダンスジャンルにつての考察 Vol.2に続く